ヘタレな野獣
電話を切り、店をどうしようかと思案していると、ヨレヨレ君に声をかけられた。


「・・・田之上さぁん、ちょっと相談したい事があるんだけど」

私はヨレヨレ君を完全無視し、田之上さんをデスクに呼んだ。

「・・・・」

そんな私をヨレヨレ君はジッと見ている。

見てんじゃないわよ、誰も居なかったら、私は絶対にそう大声を張り上げていたに違いない。


「・・・何ですか?」
田之上さんが少し言いにくそうに声をかけた。

「山田部長位の年齢の人が好みそうなお店、どこか知らない?」

私は両手を顔の前で組んでその上に顎を乗せ、田之上さんに聞いてみた。

「えぇえ?部長位の歳の人、ですか?」


「・・・田之上さん、その件は僕が、・・・下がって構いませんよ?」

はぁい、そう言って田之上さんは自分のデスクに戻っていった。

「ちょっ、雨宮課長!?」
事もあろうか、ヨレヨレ君は、唯一の頼みの綱の田之上さんを・・・

「アナタねぇ!余計な事、しないで貰えるかしら!」

周りに聞こえないよう、小声で文句を精一杯たれた。

「昨日の店でいいじゃありませんか」

そんな私の言葉など聞こえていないかのように淡々言ってのける。

「言いましたよね、僕も同行しますから・・・」

私の肩を一度ポンッと叩いて、自分のデスクに戻っていった。


私はそんな彼の後ろ姿をジッと見つめていた。




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