ヘタレな野獣
駆け引き
ふぅ・・・
朝から溜め息なんかついて、左で持つペンをクルクル回している。

憂鬱だ。
はぁ・・・


「田崎補佐、二番に外線です、サインズの山下様から」


「!!っ、ありがとう、・・・
お待たせ致しました、田崎です。わざわざ申し訳御座いません」

『明日明後日中には御連絡致します』
昨日私は先方の山下部長にそう言った。


意を決して連絡を入れたのが一時間程前で、丁度部長は会議に出席されていて、だから仕方無く、応対してくれた人に、電話があった事を伝えて貰うようお願いをして電話を切った。


『いやいや、こちらこそ悪かったね、緊急に会議が入っちゃって・・・で、用件は?』

このたぬき親父が・・・


受話器を握る左手に力が入る。


「先日の件、何ですが・・・明日は如何でしょうか」
『明日、かね、う~ん、と・・・大丈夫だ、時間はどうする?』
「はぁあ・・・そうですね、19時では如何でしょうか、もし部長がお嫌ではなければ、場所はこちらで・・・」
『任せて良いのかね、悪いねぇ』
「では、19時にお迎えに参りますので、宜しくお願い致します」
『何を食べさせてくれるのか、楽しみにしているよ、はははっ、では失敬・・・』

はぁああ・・・



「明日、ですか」
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