ヘタレな野獣
「っ!なんて顔してんですか、そんな顔されると・・・」

フッと苦笑いを浮かべ、私の耳元で囁いた。

「このまま冬子さんを抱いてしまいたくなる」

っ!!!!!

クラクラして、立っていられなくなる。

「取り敢えず今夜はこれで我慢します・・・」

そんな台詞が聞こえたかと思うと、右手で顎を持たれ、上に向けられたかと思うと、柔らかい唇が降ってきた。

「ンン・・・ン」

段々深く、そして彼の舌が私の歯列をなぞったかと思ったら、歯をこじ開けて彼のそれが割って入ってきた。


あぁあ・・・気持ちいい、こんなキスをしたのは何年振りだろうか、何度も何度も角度を変え、彼の舌が私の口腔を犯して行く。

だ、め、・・・立っていられない・・・

私は無意識に、イヤらしい喘ぎ声を上げていた。

「ヤバい・・・」

ヨレヨレ君が小さな声でそう呟いた。

「これ以上は・・・止まらなくなる」

お休み、そう言っておでこに軽くキスを残して彼は部屋を出て行った。

一目見た瞬間恋に落ちる・・・

少し前にヨレヨレ君がそんな事言っていた。

自分の気持ちをキチンと受け止めると、私もきっと初めて逢ったあの日、彼に落ちてしまっていたんだと再認識する。

キス、上手かったな・・・

こんなに心が躍るのは何年振りだろうか。

岸田に言ったら、なんて言うだろう、笑うかな、それとも・・・


明日岸田に電話しよう、

私は飲みかけのビールを飲み干し、高鳴る胸をひたすら落ち着かせ、深い眠りに落ちた。
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