ヘタレな野獣
過去の男
翌日岸田と連絡がとれ、ランチを一緒に食べる事にした。

約束の店に行くと、岸田は既に来ていて、私を見つけると手を振って合図をくれた。


「早いじゃない、」

そう言えば、雄馬の部屋ってこの近くだ・・・

「へへへん、だあって、雄馬があ、寂しがるんだもおん」

へっ、さいですかっ!

また雄馬ん家にお泊り、ね・・・
羨ましいけど、やってらんない!

毎週末、ほんと感心する。

私には絶対出来ないと思うよ・・・

「で?話あんでしょ?・・・」
「・・・・・・」

食事も終え、アイスティーをストローでくるくるしながら岸田が言った。

「何なの?これでもあたし、雄馬との時間を割いて、ここに来てんのよ、早く言いなさいって」

出たよ我が儘娘。

でもまぁ、呼び出したのは私だからね。


私は夕べの一部始終を岸田に話して聞かせた。

「あんた、まさか奴の言ってる事、そのまま鵜呑みにしてんじゃないでしょうねぇ」

えっ?
だって・・・

「だって、雄馬の話とつじつまが合うじゃない。それに雄馬の事は一切持ち出してないし」

「ふぅん・・・
信じちゃってんだ・・・」
「いっ、いけない!?」
「あんたさぁ・・・
やっぱ、奴に惚れちゃったんじゃないのぉお?」

岸田は、私の顔を下から覗き込むように見ていた。

「///っ、止めてよ!」

少し視線を外し、窓の外を見ながらズルズル音を立ててアイスティーをストローで吸い上げる。
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