ヘタレな野獣
「あはっ、わっかりやすぅい。そっかぁ、そうかぁあ、うん、相手は誰にせよ、良い傾向だ」

岸田はそう言って、自分も私と同様、ズルズル音を立ててアイスティーをストローで吸い上げた。

店を出て、ウィンドウショッピングをしていたら、岸田の携帯がなって、私達はそこで別れた。


「来月の小泉君の命日、冬子、行くんでしょ?」
「うん、行くよ・・・」
「辛いかも知んないけど、ちゃんと報告しなよ?」
「・・・分かったから、早く行けって、雄馬、首長くして待ってるよ!?じゃあね、また月曜に、バイバイ」


別れ際、そんな会話を残して、私達は別れた。

岸田と別れて、家に帰る途中、最寄りのスーパーで、二、三日分の買い物をしてから帰宅した。

買った食材を冷蔵庫に入れ、ついでにミネラルウォーターのボトルを手にした。

500ミリリットルの半分程を一気に飲み干し、一息つく。


“小泉 正直”

嘗て私の恋人だった男性。


この世にもう存在しない人・・・


「もう、3年、かぁ・・・」


3年前の6月某日、彼は自らの命を絶った。

自殺だった。


何故彼が自ら命を絶たなければならなかったのか、未だに分からないまま。

あの日から私は祥月命日には必ず正君の実家に行っていた。

そして仏前で手を合わせていた。

そんな日が続いた、2年前の一周忌のあの日、彼のお父さんから言われた事、それは・・・

『とこちゃん、今までありがとね、アレも毎月とこちゃんに逢えて嬉しかったと思うよ。けどね?アレととこちゃんは夫婦じゃないんだよ、今まで散々世話かけといてこんな事言えた義理じゃないけど・・・

とこちゃんには未来がある、こんなとこで立ち止まってちゃいけない。
とこちゃん、新たな人生を歩きなね?アレもそう願ってると思うよ・・・』


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