雫に溺れて甘く香る
「俺は明日も休みだからな。午前中は手伝ってやる」

「……うん。ありがと」

何だかとっても偉そうだけど、うん。


続木さんは洗濯機を回し、それからクリーニング屋さんに行った。

さすがに悪いので起きようとした私を、帰ってきた彼はベットに押し戻して、それからキッチンで何やらやっていたみたい。


しばらくしてから寝室に戻って来た。


「朝飯」

小さなトレイに乗っていたのは、あんパンとストロー付き牛乳パック。


「…………」

「なんだ」


ぶっきらぼうに言われた言葉は短くて、それが照れ隠しの様で……。


「ぶは……っ」

気がつけば笑い転げていた。

外国のロマンス小説でも読んでるの?

でも、朝食の定番はトーストにコーヒーでしょう。

しかも、たぶんキスで起こされるのも定石だよね?

いや、別の形で起こされた事は起こされたのだけれど。


「腹減っただろうが」

「うん。減った減った。ありがとう」

受け取ると、彼はほんの少しだけ口角を上げ、それからまた寝室を出て行った。


何だか甘やかされてるみたい。


たまにはいいかも知れないけれど、何だか奇妙でムズムズするから、彼の用意してくれた“朝食”を食べると、着替えてベットから出た。


「お昼は私が作る……」

乾燥機を使い終わったらしい続木さんが、ソファーの上で洗濯ものを畳んでいる。

その手に下着があるのを見て、急に部屋が暑くなった気がした。

「ちょ……! そこまでしなくていいよ!」

「やり始めたなら、最後までやるだろう」

その心掛けは大切だけれどもっ!
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