雫に溺れて甘く香る
160センチある私が見上げるくらい背が高い。きっと190センチ近くはあるよね。

癖のないサラサラとした髪を無造作に分けて。ちょっと目付きは鋭いけど全体的には綺麗に整った顔の造作。

美男子って、きっとこういう人の事を言うんだなぁ。

とても綺麗な目をしている……。

そう思って見上げていたら、その人は目を細めて溜め息をついた。


「そこにいられると開店の邪魔だ。客じゃないなら、さっさとどっか行け」

彼はガコンと黒板を置くと、何事もなかったように店に戻ろうとする。


……今日は一日ついていない。
いろいろとあって、忍耐のにの文字も頭の片隅に残っていなかった。

それでなくても『たまに悠紀は喧嘩っぱやい』とかよく言われる。


目の前のシャツをわしっと掴むと、少し驚いて振り返った奴を睨みながら微笑んだ。

「私は客よ。店が開いたならちょうどいいじゃない。濡れてしまったお客様に、タオルくらいは貸してくれるのよね~?」

そう。第一印象って、つくづく大切なんだと思う。










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