あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
5年前。
俺が標的になった。
綾音と出逢う前の話だ。
仕事中にも度々話しかけられ、昼休みも何故か俺の所に割り込んできたりした。
トイレから出たら、必ず近くにいた。
しまいには、後をつけられて、家の場所までバレてしまった。
それだけなら、俺自身の問題で済んだのに。
吉岡さんは、当時俺の家に出入りしていた恋人に、あることないことを吹き込んで、別れさせようとしたのだ。
俺は不甲斐ないことに、何も気が付かなかった。知ったのは、別れてからしばらく経ち、偶然再会したときだ。
ある日突然、身に覚えのない浮気話を指摘され、別れを告げられた。
大学時代に知り合い、付き合って3年。
結婚を視野に入れていた女だった。
突然の恋人の別れと吉岡さんのエスカレートする行動に、疲弊しきった俺は、ある日過労で倒れた。