あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
「……っ……たか……ゆき……さん?」
目の前の唇が俺の名前を紡ぐ。
慌てて、顔を上げると……ゆっくりとその長い睫毛が持ち上げられた。
「……綾音!」
「……赤ちゃん……は?」
その瞳の焦点が俺に定まった途端、掠れた声が問いかける。
その目は心配そうに揺れている。
安心させるように手を繋いで、綾音の耳元で、今の現状を教えた。
「綾音。今、綾音は切迫流産になっているんだ。流産はしていないけれど、まだ油断はできない状態」
「そんな……!」
綾音の眉間に皺が寄り、悲痛な声を上げる。
落ち着かせるために、その手をトントンと叩いた。
「落ち着いて。だけど、安静にしていれば、必ず助かるから。1週間、赤ちゃんのためにも、入院してほしい」
1週間というワードに綾音の表情が曇る。彼女が何かを言う前に、俺が口を開けた。
「仕事のほうは気にするな。綾音の一番の仕事は子供の命を守ること」
「……それは、そうなんだけど……」
「矢田部長もお前と赤ちゃんのこと心配してたからな。安静にしろ」
「……はい」
綾音の言葉に俺が頷くと、ようやく綾音は微笑みを返してくれた。