Pioneerーあなたは私のパイオニアー
「着いたよ。さ、降りて」
「はい…わぁあ!夏祭りだぁっ!」
そう、連れて来られたのは…ある市の、夏祭り。
私、祭りに行くことが大好きだから、すっごく嬉しいなぁ。
「あっ荒木先生あそこっ!行きましょうっ!」
「ははっ、高村先生、祭り好きなんだね。すごく、元気になってるよ?」
「えへへっ…」
ハイテンションになった私は、彼を引っ張り走り出した。

「ん~!美味しいっ」
あの後、焼きそばとリンゴ飴とチョコバナナなどなどを買ってもらった私のテンションは、もうおかしくなっていた。
「高村先生は、すごく美味しそうに食べるね。見ている俺まで嬉しくなるよ」
「ありがとうございます…うふっ」
「あ、高村先生、こっち向いて?」
ニコニコしていた彼が、何かに気づいたように私を呼ぶ。
そっと彼に顔を向けると、
「唇に、チョコレート付いてるよ。取ってあげる」
と言われ、指先でそっと取ってくれた。
「すみません、ありがとうございます」
指先を舐める姿に、少しキュンと来てしまった。
「あ、花火…始まりましたね…綺麗…」
「本当だ…綺麗だね」
どうやら、花火が始まったようだ。
それと同時に私達は立ち上がり、近くへ移動する。
「わぁ、すごく混んでる…荒木先生、見失っちゃいそう…」
「大丈夫だよ、スーツ姿は俺らだけだろ?」
くしゃっと、少年のような笑顔。
何度見ても素敵だと思う。
「ここでならよく見えるね。ここでいい?」
「はい」
夜空に開いていく花は、本当に美しい。
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