熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
あたしが、こんなに変われたのは、神さま――魚住とと先生のおかげ? それとも彼――航平くんのおかげ?



いま校舎の屋上には、あたしと彼の2人しかいない。

2人っきりの世界だった。

でも今、そこはのんびりと心安らぐような空間ではなかった。

吹きすさぶつむじ風によって、彼に会うためにせっかくセットしてきたヘアースタイルはグシャグシャに乱され、そのうえスカートの中が見えそうで恥ずかしくてたまらない。

いやそれよりも、このまま、じっと黙って、ここで彼からの返事を待っているのが辛くて、切なくて、たまらなかった。

できるなら、今すぐこの場所からいなくなりたかった。本当は今すぐ逃げ出してしまいたかった。


でも、やがて――――


しばらくの間、黙ってうつむいてた彼が、ようやくクチを開いてくれた。

「お前が…俺のどこを好きになってくれたのか、俺は知らないし……、俺も…なぎさのことは、ほとんどまだ何も知らない……」


「………」
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