熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「誰にでも若い頃は青臭い正義感があるもんだ。だからオトナのしていることが汚く見えて仕方がない。けどな、ガキっぽい正義感をふりかざして、なにも静かな海にわざわざ波風を立てる必要もなかろう?」
「あいにく俺は、見て見ぬフリができない性分なんスよ」
先生は「フッ」と小馬鹿にしたように笑うと続けてこう言った。
「意外だな。お前は他人になんて興味のない、クールなヤツかと思ってたんだが」
たしかに……、とあたしも思った。
「先生は“ペンは剣よりも強し”ってことばを知ってますか?」
「たとえ力がある者でも、新聞記事などの文章で暴露されることによって、社会的に抹殺されることもある、ってことだろ?」
「先生。俺、東京の学校にいた頃、新聞部だったんスけど、自分の書いた記事で自分の学校の先生を懲戒免職ギリギリまで追い込んだことがあるんスよ」
比嘉くん、前の学校のときは新聞部だったんだ…。でも懲戒免職…仕事を辞めなきゃいけなくなるほど追い込んだ、って……?
「学校の近くの駅で、階段の下からスカートの中を盗撮しているヒトがいるみたいだ、っていう噂があったから、張り込んで捕まえてみたら、なんとソイツは俺の学校の先生だった。そして、俺はそのことを学校新聞の号外に書いた」