アイ・ミス・ユー


せっせと働く金子を見ていると、この人って根っからのお人好しなんだろうなぁと思う。


みんなは浮かれてビールを飲んで、誰かがバーベキューを焼いてくれるだろうと遠巻きに見ている中で、率先して嫌な顔ひとつせずに黙々と作業している。


見返りを求めることもなく、みんなが喜んでくれるだろうとやっている。


お人好しで、優しくて、他人のために頑張るタイプ。


思わず聞いてしまった。


「休みの日までそんなに働いて疲れないの?」


せめてもの日除けで彼はキャップをかぶっていて、その下から少し驚いたような目が見えた。


「え?働いてるって?今日は仕事休みだよ?」

「……………………ちょっと天然ぽいし」

「なにが?」

「なんでもない」


なるほど、みんなのために働いているという自覚はないらしい。
ますます不思議な男だ。


頬を緩めそうになっていたら、頭上から何かがポトリと落ちてきて、視界が半分遮られた。


「???」


左手で頭を触ると、帽子?


パッと隣を見たら、金子が自分の帽子を私にかぶせてくれていた。


「女の子は日焼けに注意しないとね。貸してあげるよ」

「…………もう『女の子』って歳じゃないわよ」

「何言ってるの。そんなことないよ」


私の可愛げのない発言も、金子はゆるく流してしまった。


参ったな、今日は仕事じゃないからなのか、少しだけメンタルもおかしいのかな。
こんな小さなことで喜んじゃうなんて、私らしくもない。


動揺して、帽子を貸してくれたお礼も言えなかった。

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