アイ・ミス・ユー
バーベキューのお肉や野菜が焼き上がり、ワラワラと鉄板の周りにみんなが集まってくる。
ここで改めて乾杯し、各々お酒やお茶などを飲みながらバーベキューを楽しんだ。
真夏のキャンプってどうなんだろうと思っていたけれど、暑い日に熱いものを食べるのも悪くない。
翡翠ちゃんは基本的にテントの中にいて、日焼け対策を必死にとっている。
どうしても色白の肌は死守したいらしい。
「日焼けよりもお肉美味いのにね。あの子ほんともったいないわ、いろんな意味で」
横目でテントにいる翡翠ちゃんを見やった樹理が呆れたように笑っていた。
ついでに、とばかりに私のかぶっているキャップを指差す。
「で、結子はその帽子どうしたの?」
コホンと咳をして首をかしげておいた。
「あー、なんかね、貸してくれたのよ。日焼け注意って」
「えーうそー誰ー、私も借りたーい、貸してほしーい」
「樹理っ。そうやってからかうのやめてよ!」
もう誰に借りたかなんてとっくに分かっているのであろう樹理は、ニヤニヤとした笑みを浮かべて何か言いたげだ。
でも言わせるまい。
「結子さぁ、5年前のことは金子くんの若気の至りってやつで許してあげたらいいじゃない」
若気の至り、か。
実際そうなのかもしれないけれど。
私にとってあの時のキスも衝撃だったけど、それ以上に無意識に繰り出したビンタの方が心苦しい。
強烈な平手打ちを浴びた金子は、私のことをどう思っただろう。
また素直になれない自分が、少し見え隠れした気がした。