アイ・ミス・ユー
その後、金子がなかなか事務所に戻ってこないので、上層部と揉めてるわけじゃないわよね、と不安になった私は、コソッと抜け出して企画開発部に行ってみることにした。
イベントの大元のほとんどは企画開発部が担っており、社長とも直接繋がりがあるところだ。
金子が行くとすればそこしかない。
ひとつ上の階なので、エレベーターを使わずに階段で向かう。
企画開発部の事務所の前では、腕組みをした私より少し年上の綺麗な女性と、金子がなにやら話をしていた。
「販促部の主任がちょっと変わった猪突猛進タイプっていうのは噂に聞いてたけど、これほどのものとは思わなかったわ」
「恐縮です。決して会社の損失にはしませんから」
「すごい自信ね」
「自信がなくちゃやっていけませんから」
2人の会話はあくまで和やかで、ピリついたムードは漂っていない。
タイミングを見計らって声をかける。
「あのー、金子主任。どうでしたか?」
「あ。綾川さん。心配して来てくれたの?」
「仕事が増えるのか減るのか気になっただけです」
振り返ってきた金子が、どこかホッとしたような顔で私に笑いかけてきた。
その隣で、女性が怪訝そうに私を見つめている。
「結果としては、フェアの名前の変更は出来ないって。でも店舗の販促物に関しては一任するって言ってくれたから、ひとまず控えめにオータムセールってつけておこうかな」
まぁまぁ満足そうに報告されて、どうせ無駄だと思っていた私としてはかなり驚いた。
「え!嘘!?通ったんですか!?社長と直で話したとか?」
「ううん。でも専務と話せたから。褒められたよ。勇気と自信を買ってやるって」
「そんなドヤ顔されましても……」
苦笑いしていたら、もうひとりの女性が歩み寄ってきた。