アイ・ミス・ユー


たった数分の会話なのに、なんだか生気を奪われたみたいに疲れ切ってしまった私は、ため息をつく余裕すらなくフラフラと歩き出した。
後ろから金子がついてくる。


「小野寺部長はお口が達者らしいね」

「……ですね」


金子の言葉に同調すると、彼はボソッと暴言を吐いた。


「おしゃべりクソ野郎だね」


ブッと吹き出して笑ってしまった。


「ちょっと、笑わせないでよ」

「だって本当のことじゃん」

「金子くんって意外と口が悪い、とか?」

「今のは綾川さんを笑わせようと思ったからだよ」


サラリと言ってのける金子のハートの強さ、ある意味尊敬する。
この人はいつも涼しい顔でけっこうすごいことを言う。
仕事でも、プライベートでも。


「もう社内恋愛なんてしない、って思ってる?」


廊下を歩きながら問いかけられて、私は小さくうなずいた。


「コリゴリ」

「でも仕事を頑張ってる姿とか、間近で見られるよ?」

「見なくたって恋愛できるもの」


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