アイ・ミス・ユー


悲しいことに、こうして忙しくて残業になったりすると、当然帰りは金子と一緒になるわけで。


私としてはそれが一番の今の悩みだったりする。


この日も販促部は遅くまで残業し、会社を出たのは22時を過ぎた頃だった。


「お腹空かない?」


みんな散り散りに帰路について、帰る方向が同じ私たちは当たり前のように一緒に地下鉄のホームに降りる。
そこで同意を求められるように聞かれた。


「お腹は…………空いてるけど」


だって夕食は何も食べていない。
軽食を摂りながら仕事をしていた社員もチラホラいたけれど、私にはそんな余裕なんて無かった。


「ラーメンでも食べて帰る?」

「………うん」


金子の誘いをあっさり受けたのは、お腹が空いていたし、以前2人で行ったラーメン屋が美味しかったからというのもある。


こうして2人で並んで歩くことに、もう違和感なんて感じない。
感じるのは、ほっこりする気持ちと、安心感。


ラーメン屋に行く本当の理由は、今はまだ気付かない振りをしていよう━━━━━。


< 124 / 196 >

この作品をシェア

pagetop