アイ・ミス・ユー


そうなのだ。
ここ1ヶ月、今野とプライベートで会話を交わしていない。

ということで、散々今まで誘われまくっていた飲みやカラオケに、一切誘われなくなったのだ。


清々した、と思っていた。

毎回しつこくうなずくまで誘ってくるし、飲みならまだしもカラオケは押しつけがましいし、迷惑していたところだった。

あの底抜けに明るい笑顔もうざったかったし、周りをパタパタ走り回る落ち着きのなさも急かされてるみたいで苦手だったし、ところ構わずオーバーリアクションなのも学生みたいでイライラしたし。


そこから解放されたと思えば、「清々した」という言葉がピッタリだった。




だけど、だけど━━━━━。




「山崎さん。来月からの新商品に合わせた食器のディスプレイ案、立てておいたんであとで目通してください」


ボソッと力のない声で今野が私のデスクに何枚かの書類を置いた。
もちろん、笑顔なんてあるわけがない。
むしろ落ち込んで、どんより沈んだ顔。


お葬式レベルのその表情に突っ込みたい気持ちをどうにか堪えて、「分かった」とだけ返しておく。
心なしかこっちまで声のトーンが低くなってしまった。


トボトボと自分のデスクへ戻っていく寂しい後ろ姿を見て、ズキッと胸が痛んだ。


なんであんなに暗いわけ?
1ヶ月前の私、なんかおかしいことでも言った?

むしろ過ちに対して理解ある言葉を伝えたつもりだし、今野を1ミリも責めてなんかいない。


それなのに、どうして。

どうしてあんな態度なわけ?


納得いかなくて、ため息が漏れた。






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