アイ・ミス・ユー


他愛もない話をしながらマトン肉を堪能していたら、お店のドアがガラッと開く音が聞こえた。
合わせてカウンターの中にいた店員さんが元気よく「いらっしゃいませ〜!」と迎える。


「2人なんですけど、席空いてますか?」


お伺いをたてるその声は、聞き覚えがある声だった。
私も結子も、ほぼ同時にドアの方を見やる。


今野拓がいたのだ。

しかも、なかなか可愛らしい彼と同年代くらいの女の子を連れて。


ギョッと驚いて彼らをガン見していたら、今野もこちらに気がついたらしい。
漫画みたいに目を丸くして、一瞬後ろにいた連れの女の子をチラッと見たあと私たちに会釈した。


「お、お、お疲れ様です〜」

「お疲れ様。可愛い子連れて〜。今野くんやるじゃない」


隣で結子が今野をからかっていたけれど、本人は全身を使って「違います!違いますよ!」と否定していた。


「たまたまそこで会って、ちょっと飲んでいくかってことになってそれで……」

「この人たち誰〜?」

「あ、会社の先輩だよ」


すかさず後ろの可愛らしい彼女が一歩前へ踏み出してきて、ニコッとタレ目になりながら頭を下げてきた。


「拓ちゃんがいつもお世話になってまーす」

「余計なこと言うなよっ」


完全に彼氏彼女的な会話を一方的に聞かされ、なんだか無性に面白くない気分になる。
苛立つ私をよそに、店員さんが今野たちに席を案内した。


U字のカウンター席の、斜め向かい側あたりに通されたらしい彼ら。
それを私と結子は目で追ってしまった。


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