アイ・ミス・ユー


「なんだぁ、今野くん彼女いたのね。レベル高い子だね〜。あ、もしかしてまだ彼女じゃないのかな?前に言ってた好きな子だったりしてね。拓ちゃん、なんて呼ばれてたし〜。ね、樹理。………………樹理?」


若い2人を微笑ましそうに見ている結子と、私の気持ちは全然違っていた。
祝福ムード漂う彼女とは正反対の感情。


なんだこれ。


「あ、うん、ごめんごめん。今野のことはいいじゃない。そっとしておいてあげよ〜。デートの邪魔しちゃ悪いしね」


だんまりを決め込むのも不自然なので、それっぽいことを返して火の通ったマトン肉を箸でつまむ。
私のごちゃごちゃした感情には気づかず、結子は「それもそうね」とビールを口に運んでいた。



そっとしておいてあげようなんて言ったくせに、結局気になって斜め向かいに視線をチラチラ送ってしまう。


楽しそうに笑い合う姿。

タレがうまいと大きな声で絶賛する姿。

ビール2杯で真っ赤になる顔。

白ご飯大盛りをかき込む姿。

なにかにつけて突っ込まれ、笑ってごまかしているところ。



━━━━━1ヶ月前、彼の隣にいたのは私だったはずなのに。


どうしてこうなった?






苛立ちと虚しさと、少しの切なさがどんどん胸を痛ませる。
ズキズキと音を立てて心を揺さぶる。


いつも彼に「あんたってほんとバカ」って言ってたけど。
本当の本当にバカなのは、私。


突き放してから気づくなんて。




意外と彼の存在って、私の中で大きかったんだと。








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