俺様社長と結婚なんてお断りです!~約束までの溺愛攻防戦~
「ううん。これは婚約指輪って言うのよ。 お父さんの手作りでね、27歳の誕生日にプレゼントしてくれたの。 世界に一つしかないおばさんの宝物よ」

「婚約指輪?? いいなぁ、ういも欲しいなぁ〜。27歳になったら、貰えるかな?」

世界に一つしかないなんて、なんて素敵なんだろう。

無邪気に夢見る羽衣子を見て、洸は思いっきり馬鹿にしたような顔で言う。

「相手がいるだろ、相手が。 羽衣子じゃ見つかるか怪しいな」

羽衣子はうーんと考えこんだ。


「そっかぁ、確かに! ! ういにプレゼントしてくれる相手を探さないといけないのか〜。 やっぱり賢いね、洸ちゃんは」

「・・・本物の馬鹿だな。羽衣子は」

虐められてる事にも気づかず、洸を褒める羽衣子に洸は心底呆れた顔をする。


「まぁ、27歳になっても相手が見つからなかったら・・」

「たら?」

羽衣子は目を輝かせて、洸を見上げる。

「仕方ないから、そん時は俺がお前を貰ってやるよ」

「ほんとー!? 約束だよっ」

羽衣子は飛び上がって、バンザイをする。自分も世界に一つしかない指輪をもらう事ができるらしい。

ただただ、それが嬉しかった。


「洸っ!! 何をそんなに偉そうに・・
ういちゃん、うちの馬鹿息子なんかよりういちゃんには素敵な旦那様が見つかるからねっ」

「いてぇな、クソばばぁ」

おばさんに拳骨で頭を殴られた洸は痛みに顔をしかめた。
その顔を見て、羽衣子はケラケラと笑った。


遠い昔の他愛もない約束だ。
約束の27歳の誕生日まであと3ヶ月なんて、羽衣子は綺麗さっぱり忘れていた。



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