俺様社長と結婚なんてお断りです!~約束までの溺愛攻防戦~
「10年近くも‥‥ってどういう意味?」

「羽衣ちゃんさ、プリュムの由来って知ってる?」

誠治は身を乗り出すようにして、羽衣子に顔を近づけた。

「もちろん!フランス語で羽根。本店のある美羽町から名付けた‥‥って社員ならみんな知ってるじゃない」

「本当は違うんだよ。誰にも言うなって言われたけど、もう8年も前だし時効かな? プリュムは羽衣ちゃんの名前から取ったんだって。羽衣ちゃんの婚約指輪を作るために作った店だからって言ってた」

「‥‥う、そ‥‥」

羽衣子は首にかけた長いシルバーのチェーンをそっと外した。洸にもらった羽根の指輪。薬指にはめるわけにはいかない。だけど、部屋に置きっぱなしにもしたくなくて‥‥誰にも見られないように長い長いチェーンをつけて、服の中に隠した。まるで自分の本心も隠すように。

「多分さ、牛丼じゃなくて、炊きたてのごはんとお味噌汁なんだよ。洸にとっての羽衣ちゃんは」

うまいことを言ったつもりなのか、誠治は満足気に微笑んだ。誠治は羽衣子の気持ちを聞き出そうとしたりはしなかった。その後は仕事の話や誠治が最近凝っている趣味の話を聞かせてくれた。焼肉はなにを頼んでも美味しいし、誠治の話は楽しい。それなのに、羽衣子はどこか上の空だった。洸の顔が頭に浮かんでは消えていく。

10時前くらいに誠治と別れ、羽衣子は家に帰った。寝る前にふとスマホを手に取ると、洸からメールが届いていた。

【業務連絡 香港のデザイナーリー・マーロウ氏と提携の話を進めている。まだ不確定だから、情報は秘書室より外には出すな。マーロウ氏からコンタクトがあったら、最優先で必ず俺に通すこと】
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