俺様社長と結婚なんてお断りです!~約束までの溺愛攻防戦~
エピローグ
羽衣子、27歳の誕生日当日。

「おいっ。いつまで悩んでんだよ⁉︎ さっさと出しに行くぞ」

「わぁ〜もうちょっと、あと5分待って!」

羽衣子の手の中には、保証人欄まで完璧に記載し終えた婚姻届。あとは役所に提出するだけの状態だ。

「‥‥だって、これ出しちゃったら私洸ちゃんの奥さんになっちゃうんでしょ?」

「そりゃそうだろ。 ていうか、なんで嫌そうなんだよっ」

散々待たされてイラついている洸に羽衣子のセリフが追い打ちをかける。

「だって、洸ちゃんのことを好きかもとは自覚したけど‥‥今さらながら結婚って好きだけで決めちゃダメだよね⁉︎
私、365日無休の家政婦にはなりたくない!!」

「今だって同じようなもんだから、なんも変わらねぇって言ったろ⁉︎」

「普通、こういう時は大事にするよとかって嘘でも言わない〜⁉︎ やっぱり、私なにかを大きく間違えてる気がしてきた‥‥」

「‥‥‥‥。いいから、行くぞっ。俺は来週には香港で、今死ぬほど忙しいんだよ」

洸は嫌がる羽衣子を引きずるようにしてマンションの部屋を出た。エレベーターを待つ間にも洸の愚痴は続く。

「だいたいなぁ、新婚早々になんで単身赴任しなきゃなんないんだよっ。向こうでも仕事は山程あんだから、お前も来いよ」

「だって、私英語喋れないのに海外なんて怖い‥‥。美羽町の本店も立て直ししたいし。頑張って英語勉強して自信ついたら、洸ちゃんとこ行くからそれまでは許してよ」

「お前の英語なんて、どうせ30年待ったって上達しないだろうが」

「うぅ。やっぱりこんな冷たい男が旦那様なんて、嫌かも‥‥」

マンションのエントランスを抜けて外に出ると、ひんやりと冷たい風が羽衣子の頬を撫でた。ついこの間まで残暑が厳しいなんて話をしていたのに、あっという間に冬の足音が聞こえてきていた。薄手のトレンチコートでは肌寒いくらいだ。

「わぁ。今日は冷えるね〜」

羽衣子が両手をこすりながら少し前を歩く洸に声をかけると、洸は立ち止まって羽衣子に手を差し出した。

「へへっ」

羽衣子は照れたように笑って、差し出された洸の手を取る。繋いだ手はじんわりと温かくて、二人でならどこまでも歩いていけるような気がした。

END
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