イジワル御曹司と花嫁契約
頼ってしまいそうになる。


弱音を吐きたくなってしまう。


でも彰貴にこれ以上頼るのはいけない。


いくら契約だからといっても、立派な個室を用意してもらって、手術代や入院費用まで払ってもらっているんだから、これ以上負担はかけたくない。


 それに、好きだから余計甘えたくなるんだ。そんなの迷惑なだけだ。


 この問題は私の問題。


私だけで解決しなきゃいけないし、乗り越えなきゃいけない。


どんなに辛くても、絶望の波に飲み込まれていても、助けを求めちゃいけないんだ。


 手術までの一週間は、なるべく母と一緒にいるように努めた。


まるで、タイムリミットがあるかのように、たくさん話をした。


ほとんどはとりとめのない話ばかり。


今日は天気がいいね、とか、売店の焼き菓子が美味しいとか、元気になったらどこか旅行に行きたいね、とかそんな何気ない会話ばかりだけど、どうしてだか一つ一つの言葉が胸に刺さった。


 今この時の会話を忘れないようにしようと、大事にしようと、綺麗な包装紙で言葉を包むみたいに、母の口から出てきた言葉を大切に胸の中にしまった。
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