イジワル御曹司と花嫁契約
たそがれの密月
彰貴が帰った後、ようやくお母さんと対面できたけれど、まだ意識はなく目覚める様子もなかった。


それでも面会時間が終わるまでは病院にいて、とりあえずは安定していると聞き家に帰ることにした。


 家に帰り、ひんやりとした暗闇の中電気をつけると、誰もいない部屋がとても殺風景で寂しく見えた。


一人は、辛さが身に染みて、心が痛い。


孤独なんて大嫌いだ。


でも、これが現実だから受け入れるしかない。


お母さんが帰ってくるまで耐えるしかない。


一生続くわけじゃない、希望はある、だから、もうちょっと頑張れ私。


 押し寄せてくる寂しさを押し退けるように、ぐっとお腹に力を入れて動き出す。


とりあえずお茶でも飲もうと思って、やかんに火をつける。


 そういえば、仕事が終わってから会いに来るって言ってたけど、どこで会うんだろう。


 どこかに行くにしても、家に迎えに来るだろうから、上がるのかな? 


上がらせないのも少し失礼な気もするし。


家に入ったら何もなくてびっくりするだろうな。


でもきっと、そんなの今更だろうな。


今更飾っても仕方ないし、そもそも物理的にも飾るものすらない。
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