イジワル御曹司と花嫁契約

「大丈夫だよ、きっともうすぐお母さんが退院するから」


　私がそう言っても、彰貴は渋い顔をして不服そうだ。


「何か飲む？　っていっても彰貴が普段飲んでいるような美味しい飲み物は何一つないんだけど」


　話題を変えようと、座布団に座るように促しながら言った。


すると、キッチンに向かおうとした私の手を掴んだ。


「何もいらない。お前がいればそれでいい」


　そう言って、私を無理やり彰貴の隣に座らせた。


　密着する距離に、胸が張り裂けそうなくらいドキドキする。


彰貴は私の腰をぐっと引き寄せ、ぴったりと体をくっつかせた。


「一緒に住むか」


「はあ、何言ってるの？」


　驚くのを通り越して、呆れた眼差しで見つめる私に、彰貴は柔らかな眼差しで答える。


「一緒に住めば安心だし、何より会える時間がぐっと増える」


　会える時間が増えることはとても魅力的な提案だった。


でも一緒に住むなんて現実的とは思えない。


「住むってどこに。うち？　古いし、何もないよ」