イジワル御曹司と花嫁契約
ほっとしていると、再び着信音が鳴った。


またも無視する。


コール音は鳴り響き、胸が落ち着かずドキドキした。


逃げてたってしょうがないのに、向き合うのが怖い。


 そして、三度目の着信音。


苛立ちが伝わってくるように、狭い家の中でコール音はひと際大きく聞こえた。


 意を決して電話に出る。


「……はい」


「胡桃!? どうして電話に出ないんだ。今どこにいる!?」


 とても焦った様子の彰貴の声。


心配する気持ちが伝わってくる。


ごめんね、彰貴。


私はあなたを傷つけることしかできない。


「自宅に帰ってる」


「何か取りに帰ってたのか? それなら連絡くらいしてくれないと」


「違う。もう彰貴の家には行かない」


 長い沈黙が続いた。


畳から、ひんやりとした冷気が足に伝わってくる。


「……どうして?」



 永遠に続くような沈黙を破ったのは、冷たく低い彰貴の声だった。


心臓が誰かの手で握り潰されるかのように、ぎゅっと縮まる。


バレないように、大きく息を吐いて、見えない仮面をつけた。
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