イジワル御曹司と花嫁契約
「お母さんの退院が決まったの。だから、同棲生活もおしまい」


「だからって急にいなくなることないだろ」


 明らかに怒っている声。それは当然すぎる怒りで、けれど私は謝ることはできない。


「お母さんも良くなったことだし、もう契約は終わり。嘘の婚約も、嘘の恋人関係も、もうする必要はないから帰ったの」


「嘘の恋人……?」


「そう、全部お芝居。仕方ないでしょ、お母さんを人質に取られたようなものだったんだから。ああするしかなかったの」


 自分の言葉に、ナイフで胸を刺されるように痛く苦しかった。


言われている彰貴は、今、どんな思いなんだろう。


「お母さんのために、俺の家に住んでた?」


「そう」


「仕方なく、俺に抱かれた?」


 ……一瞬、言葉に詰まった。


「そうだよ。私は、そういう女なの。目的のためなら、手段を選ばない」


「何言ってるか、分かってる?」


「分かってるよ」
< 196 / 280 >

この作品をシェア

pagetop