イジワル御曹司と花嫁契約
覚悟を決め、大きく深呼吸をして心を落ち着かせていた時、外からカツカツと革靴の鳴る音が聞こえてきた。


 ……来た。


 愛する人のはずなのに、とても怖く感じる。


逃げ出したくて、でも、少しでも存在を感じていたくて、色々な感情がぐるぐる回って気持ち悪くなる。


 ピンポーンと来客を告げる音が鳴った。


玄関にしっかりと鍵とチェーンがかかっているのを確認してから、音を立てないようにドアに近付く。


 丸穴から姿を見ようとして、動きが止まる。


彰貴の顔を見てしまったら、抑えている涙が溢れだしてしまいそうで、見るのを止めた。


代わりに言葉を投げかける。


「……はい」


 声が少し震えていた。


「俺だ。会って話がしたい」


 聞きなれた彰貴の声。


この声で歌われたら、思わずうっとりしてしまうだろうなと思うような、色気のある綺麗な声。


……もうすぐ、聞けなくなる。
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