イジワル御曹司と花嫁契約
家に着き、アパートの階段をのぼる母を支えて、一歩一歩ゆっくりと進んだ。


母の重みが私にはありがたかった。


必要とされること、やらなきゃいけないことがあること、それは私にとって負担ではなく生きる支えになる。


 家に入って、母を座らせると、久しぶりにワクワクした感情が出てきた。


「お母さんが家にいるって不思議なかんじ。ねぇ、疲れたでしょ。何か飲む?」


 声を弾ませてキッチンに立つ私を、母がじっと見つめた。


「胡桃、ちょっとここに座りなさい」


 急に真面目な顔をして、座布団を指さした。


対面して座らされる時は、いつも決まって怒られる時だ。


怒るといっても声を荒げることはなく、静かに淡々とお説教される。


でも、お母さんはしっかりと私の言い分も聞いた上で怒るから、終わる時はなぜか心がすっきりしている。
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