イジワル御曹司と花嫁契約
封筒の中身を見ながら固まり続けている私に代わり、母がコロっと表情を変えて、「こんなことまでしていただいて、有り難くいただきます」と笑顔で簡易車椅子も受け取った。


 母も、私の表情を見て、このお祝いの品が病院からではなく、彰貴からの品物だと気付いたのだろう。


受け取ることを拒もうかと思っていた私の心を読み、サッとお祝いの品を代わりに受け取った。


もちろん、母は品物が欲しいからそうしたわけではない。


タダより高いものはないというのが口癖だ。


 彰貴の気持ちを考えて受け取ったのだと思う。


きっと、私が受け取らなかったら、彰貴は悲しむ。


 たくさんのお礼を先生と看護婦さん達にして、タクシーに乗り込み家へと向かう。


母はタクシーの運転手と家に着くまでずっと世間話をしていたけれど、私は一度も口を開くことができなかった。
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