イジワル御曹司と花嫁契約
「彰貴様はここにはいらっしゃいません。わたくし一人で伺いに来ました」


「あ、そうですか……」


 ほっと安堵して、心臓の動きが落ち着いていく。


安心したような、がっかりしたような、何ともいえない複雑な気持ち。


「本日は、こちらをお渡しに来ました」


 八重木さんは、車の中から大きな紙袋を二つ取り出し、私に渡した。


「これは?」


「胡桃様が、彰貴様の家に置いていったものでございます」


「え? こんなにあったっけ?」


 ちらっと中身を見ると、私の洋服の他に、貰った使いかけの化粧品類なども入っていた。


「捨ててくれて、構わないのに。すみません、わざわざ届けに来ていただいて」


「いいえ、遅れてすまないと彰貴様がおっしゃっておりました。なかなか手放すことができなかったと……」


 息が苦しくなる。


受け取った紙袋を見つめて、涙が溢れだしそうになるのを必死で堪える。
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