イジワル御曹司と花嫁契約
 お母さんが帰ってきて、早数日。


私の生活に、穏やかな日常が戻ってきた。


狭くて古いボロアパートでも、薄い布団で寝ていても、貧乏を嘆くような気持ちにはならなかった。


 穏やかな生活は、ズタズタに傷付いていた私の心を、そっと優しく撫でるように癒していった。


 そんなある日、私のアパートの前に見慣れた黒塗りのリムジンが道路脇に停められていた。


私は店から帰ってきたところで、もうすっかり暗くなっていた。


 心臓がドクンと唸り声をあげる。


封印していた思いが溢れだし、胸が苦しくなる。


 運転席のドアが開き、八重木さんが外に出てきた。


「お久しぶりでございます」


「……お久しぶりです」


 八重木さんは深々と一礼したので、私も頭を下げる。


心臓はあまりにも激しく動いていて、頭を下げると、ぶちっと切れて口から落としてしまいそうだった。


「あの……彰貴は?」
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