イジワル御曹司と花嫁契約
 別れることになって、初めて彰貴が本気で私のことを思っていてくれたのだと知った。


今更知ったところで、もうどうにもならないのに……。


 俯く私に、八重木さんは言葉を付け足す。


「見ていて恐ろしくなるくらい、顔付きが変わられました。

最近はあんなに冷たい表情をされることはなくなったので、少し怖いくらいです。

寝食を忘れて、仕事に没頭しています。

ただ、思い出さないように仕事に打ち込んでいる様子ではなく、何か恐ろしいことを企てているような、そんな気配すらも感じるのです」


「恐ろしい……こと?」


「わたくしは、仕事の内容までは分かりかねます。

ですが、何か大きなことをしようとしている動きは感じるのです」


 私が、あんな風に一方的に別れを告げたから?


 もっと私が、上手く別れることができたなら。


でも、彰貴を目の前にして、冷静にしたたかに別れを進めることなんてできなかった。


 あれが、精一杯だった。


……なんて、こんなの言い訳でしかない。
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