イジワル御曹司と花嫁契約
「いい眺めだな」


 潮風に当たりながら、彼は満足気に目を細めた。


「早く返してよ」


 彼はうるさそうに顔を顰めて、私にハイヒールを差し出した。


奪い取るようにして受け取ると、スース―していた右足に履いた。


 ああ良かった、と思って梯子を下りようとすると、ぐいっと腕を掴まれた。


「逃げるなって言っただろ」


「あー……はい」


 私に何の用があるっていうんだ。


まさか、私の暴言が気に食わなくて、わざわざ追ってきたとか!?


「なんだその目は」


 恐ろしいものでも見るかのように彼を凝視していた私に、居心地が悪そうに私を見下ろす。


「……もしかして、さっきのことで怒って私を追ってきたの?」


 なんという執念深さ。そして懐の狭さ!


「は?」


 彼は眉間に皺を寄せてキョトンとした顔で私を見下ろした。


「わざわざお前を追ってくるわけないだろう。ここに来たらたまたまお前がいただけだ」


「ああ、良かった」


 ほっと胸を撫で下ろす。


でも、それならどうして私はこいつの側にいなくちゃならないの?


「どこに行っても囲まれて、本当嫌になる。ほっとできるのは一人の時だけだ」


 彼は遠くの海を見つめながら言った。
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