イジワル御曹司と花嫁契約
「この場を借りて皆様にご報告があります。

私事ながら、この度こちらの女性と婚約致しました」


　どっと会場が揺れるような驚きに包まれる。


その言葉を聞いた私は、体中から血の気がサアっと引いていった。


　声を失うとはこういうことなのだろうか。


頭が真っ白になって固まってしまう。


　束の間のどよめきの後に、一人が拍手してから皆がそれに続くようにして拍手の音がどんどん大きくなっていく。


　ハッと我に返り、否定しようとマイクを奪おうとすると、彼はサッとマイクを隠し微笑みを浮かべている。


「ちょっと！今すぐ否定して！」


「してみろよ、できるものならな」


　私たちの声は盛大な拍手に包まれて誰の耳にも届いていない。


勝ち誇った顔で会場を見つめる彼につられるように大ホールを見渡すと、歓喜の声と拍手に包まれた異様な光景が目に映る。


　……い、言えない。


嘘だなんて、言える雰囲気じゃない～～～！


　祝福の嵐を受けながら、ただ茫然と突っ立っていることしかできなかったことは、言うまでもない。
　
　
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