イジワル御曹司と花嫁契約
父の葬儀の後、二人きりになった部屋の中で、母が私に言ったことを今でも覚えている。


「胡桃のことは、お母さんが命に代えても守るから。お母さんが必ず胡桃を幸せにするからね」


 父が死んでからずっと泣いていた私に、母は力強くそう言った。


私の肩を両手でしっかりと掴んで、鬼気迫る様子で語り掛けてきた母の目からは、涙が零れていた。


それを見て、泣いていちゃいけない。


一番辛いのは母なんだと幼いながらも思った。


 私がしっかりして、母を支えてあげなきゃいけないんだとそう思った。


 その時から私は決めていた。


母を必ず幸せにすると。


そのためなら何だって我慢すると。


 私は大きく深呼吸をした。


 ……決めた。


私は、この男の手を取る。


例えこの先、どんなことが待ち構えていようとも、負けない。


絶対に、負けるもんか。


「分かった、婚約者のふりをする。

でも、お金は返すから。何年かかっても、絶対返すから」


「侮るな。俺はそのくらいの金、どうってことない」


 呆れるように言われ、私は必死に言い返した。


「それじゃ私の気持ちが収まらないの!」
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