イジワル御曹司と花嫁契約
抗がん剤治療に望みを託すのは早すぎる気がする。


手術や他に手立てがなくなってからなら、辛い闘病生活も頑張ろうと思えるけど、せっかく治る可能性の高い手術の道があるのに、希望の低い抗がん剤治療に頼るのは危険すぎる。


 そう考えると、二択じゃない、一択だ。


母を助けるためなら何だってする。


男性経験なんて一度もないけど、母を助けるためなら風俗でだって働ける。


 でも、自分が好きでもない不特定多数の男性から体を弄ばれることを想像すると、ぞっとした。


死ぬより辛いかもしれない。


 それなら……。


顔を上げ、男を見上げる。


モデルのように長身で整った顔立ちに加え、富と権力を生まれながらに手中に収めたこの男は、まるで俗世から切り離された世界からやってきた人間ではないものに見えた。


そう、例えるなら、悪魔。


 甘い言葉で巧みに心に付け入る悪魔。


彼の案に乗った結果、私の人生がどうなるか予想がつかない。


でも、この際悪魔でも何でもいい。


母を助けるためなら悪魔の手も取る。


 絶対に母は死なせない。


私が母を幸せにするんだ。
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