イジワル御曹司と花嫁契約
それに、苦労知らずどころか、苦労しか体験して来なかったんじゃないかと今は思っている。


彰貴は過去を話すことがないから、私には想像することしかできないけれど、ただ甘やかされて育ったのなら、笑ったことがないなんてありえるはずがない。


ずっと、孤独だったんじゃないだろうか。


 そういう目で見ると、子憎たらしい台詞も、不器用ながら私に心を開いてくれているようで、前ほど腹が立たなくなった。


 母は彰貴の突然の訪問と挨拶に、とても驚いていたけれど、「やっぱりね」とも言っていた。


「最近胡桃の様子がおかしいと思っていたのよ。恋してるとは思ったけど、こんなに素敵な人だったとはね」


 母の言葉に私は真っ赤になりながらあたふたしてしまった。


「違う違う、恋じゃない!」と、その場で必死に否定したかったけれど、否定したら嘘がばれてしまう。


かといって、彰貴に私が恋していると思われるは絶対に避けたい。


でも、この場では否定できない。


 彰貴は母の言葉を聞いてどう思ったのだろうと気が気ではなかった。


チラリと彰貴を横目で見ると、にこやかな外向きの笑顔を浮かべていて、心の中がまったく読めない。
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