イジワル御曹司と花嫁契約
先週末、彰貴が母のお見舞いに来た。


目的は、母に私と交際していると告げて、転院を納得してもらうためだ。


 スーツ姿で、外向きの見えない仮面を被った彰貴は、誰が見てもパーフェクトと言いたくなるくらい素敵だった。


 端正な顔立ちに、高身長の抜群のスタイル。


それに加えて、なんといっても超がつくほどのお金持ち。


彼を紹介されて、誰が反対するだろう。


 彰貴が「胡桃さんと結婚を前提にお付き合いをさせていただいています」と挨拶した時は、嘘なのに顔から火が出るんじゃないかってくらい恥ずかしかった。


 初めて恋人を母に紹介するような気持ちで、隣に彰貴がいることが照れくさくもあり、誇らしくもあった。


本当の恋人じゃないのに、私の彼、素敵でしょう? って心の奥底で母に囁きかけている自分がいた。


 前はあんなに毛嫌いしていたのに。


苦労知らずのお坊ちゃんがって、妬みにも似た嫌悪感でいっぱいだった。


でも、知れば知るほど、彰貴がいかに仕事に真摯に向き合っていて、寝る暇もなく忙しくて、何万人もの従業員の生活を左右する、あまりにも大きな責任の重圧と戦っているということがおぼろげながら見えてきた。
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