壊れるほど抱きしめて
「俺さ、結婚しようと思ってる」
「え……結婚?」
「うん、同じ会社で二つ年上の女性なんだけど、入社して半年くらいに告白されて断ったんだ。だけど彼女はめげずに何度も俺を好きだと言ってくれた。まだ俺の中には由利が居て、彼女に由利の事を話したらさ、彼女は言ってくれたんだ。『亡くなった彼女を忘れなくていいし、忘れる必要もない』って『彼女と過ごした思い出も忘れなくていい』って言ってくれて気がつけば涙を流していた。少しずつでいいから私を好きになってもらえるように頑張ると言った彼女なら付き合ってみようと思えた。付き合って二年ちょっとになるんだけど、俺は彼女を愛してるし、幸せにしてあげたいんだ。勿論、これからも由利の事は忘れないし忘れる事もない。由利はずっと大切な人には変わりないからな」
「聖……」
きっと姉も喜んで居るはずだ。
聖がまた恋をして、幸せになろうとしている。
姉を愛していた聖をちゃんと見てきたからこそ、聖が前を進んでいる事が嬉しかった。
だから今日は墓参りに行って、父と姉に報告したんだ。
「来週、プロポーズしようと思ってる。だからその前にどうしてもおじさんと由利に伝えたかった。もし彼女がOKしてくれたら由利の命日の日に墓参りに一緒に連れて行って紹介するよ」
「そっか、おめでとうって言いたいけどまだ早いかな?だけど聖がちゃんと前に進んでいて良かった」
「小春があの日、俺の部屋にきてくれたから前に進む事ができた。本当にありがとな。じゃあ冷めないうちに食べよう」
「うん」
聖の笑顔は幸せそうで、いつか坂木くんもこんな風に幸せに笑える日がくるといいな。
オムライスを食べた後は、アパートに送ってもらった。
「送ってくれてありがとう」
「ああ、また連絡する」
手を振って私達は別れた。
そしてアパートの階段の方に目をやると、坂木くんが階段を降りたばかりなのか目が合った。
まさかこんなタイミングで坂木くんに会うなんて。
私は階段まで歩いていき、頭を下げて階段を登った。