壊れるほど抱きしめて




「なぁ、何で俺を避ける?」


そう坂木くんに言われて階段を登っていた足が止まる。


「さ、避けてなんかないよ。約束したでしょ?もう深入りはしないって……じゃあね」


「ちょ、ちょっとま」


そう振り返って笑顔で言った私は坂木くんが何か言いかけたが、聞く耳を持たずに急いで自分の部屋に入った。


私は中に入りテーブルの前に座ると涙が溢れてきた。


本当は避けたいわけじゃない。
坂木くんに気持がないのも初めからわかっていたけど、好きになってしまったのは私。
自分でも気づかなかったけど、気持ちを抑えるのがこんなにも苦しいのは、坂木くんを好きになりすぎてるんだと知った。


勝手に彼に近づいて、好きになって、例え体だけだとしても側に居たくて、彼が違う誰かを想っていて代わりだとしても、彼と少しでも過ごせる時間や肌の温もりを感じられるだけで良かった筈なのに、深入りはしないと約束した以上、彼に近づいてはいけない。


私は暫く泣き崩れたが、少し落ち着くと色々と考えた。


実家に戻るか仕事を辞めて違う所に就職するかしかないと。


じゃなきゃ坂木くんへの気持を心の奥底にしまえないから。


本気で考えよう……。




< 68 / 72 >

この作品をシェア

pagetop