未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
 ふたりで、ベットで素肌にシーツをかけ、足を絡めながらまったりとしている。奈々子は、智也の胸にすり寄り、けだるそうにしている。

「心臓ドキドキしてる。」

「ああ。いつも奈々子といると、バクバクしてる。」

「私も。」

 奈々子は、ふふふと笑いながら、かばっと起きたかと思うと、智也の胸に唇を這わせて"チュー"っと吸い上げた。

「……!!!」

 不意にされた行為に、智也は、おもいっきり体を反らした。

「えへへ。初めてだけど、ついちゃった!」

 智也は声にならない声を出し、口がパクパクしている。

「先にシャワー浴びてきますね!」

と、無邪気に笑いながらお風呂場に向かう奈々子を見て、智也は、胸元の証を見ながら"ヤバい。"と、悶々とするはめになる。

 
 智也は、シャワーから戻って来ない奈々子を待ちながら、ふと机に置いてあるフォトフレームの写真に目をやる。寝室には初めて入った。初めて抱いたのは、自分の部屋。次は温泉。そして今日。この写真に写っているのは、恐らく両親だろう。

 温泉旅行から帰ってきて、モヤモヤしている自分に気がついていた。智也は長年付き合っていた彼氏に、嫉妬していた。

 ある一言だった。避妊を忘れた智也に、"避妊してくれたの初めて。嬉しかった。"と言ったこと。

 元カレとは、避妊してなかったらしい。避妊を怠っていた訳じゃなく、避妊しなくても、妊娠しないからだ。だから、ふたりの間には、避妊は存在しなかったのだ。

 両親がなくなり、ストレスから生理が止まって、未だに来ないらしい。排卵ももちろんしていないらしい。

 妊娠が出来なくてもいい、でも、側で支えてきたのが元カレだということ。それが一番の嫉妬だ。そんなことを考えていたら、奈々子が、呼ぶ声がした。

「どうした?」

 ガチャっとお風呂場のドアから真っ赤な顔を出した。

「申し訳ないんですが、生理用品を買ってきてくれませんか…。」

「ん?生理、きた感じ?」

「たぶん…。」

 智也は"分かった。"といい、素早く着替えて近くのドラッグストアに走る。

ーストレスから解放されれば生理も来ると思いますー

 そう医者から言われていたらしい。俺と付き合うことで解放されたのならいいなと、正直思っていた、智也の顔は、さっきとは売って変わって、嬉しそうだった。

 だが、奈々子の家は、ホテルA'Zの近くと忘れていた智也は、ドラッグストアで目撃されてるとも知らず、妊娠検査薬売り場のすぐとなりにある生理用品の棚をうろついていたのだった。
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