未来絵図 ー二人で歩むこれからー 

 智也の顔を見て、智衣は急に笑いながら涙を流した。娘の様に可愛がっており、奈々子の悩みを理解し、自分自身も女性として思うところがあったため、涙を流せずにはいられなかったのだ。

「そうゆう悩みを持つ人がいるってわかると、やっぱり授かるって奇跡なんだなぁと思うとさ、軽々しく抱けなくなって…一緒にいれれば、抱き締めることが出来れば十分になってしまって。それから、抱いてないんだけどさ。」

「親の前で、抱いてないとか、恥かしげもなくよく言うわ!」

 智衣は苦笑いしながら、涙を拭いて智也に嫌みを投げつける。"でも、本当によかった。"そう何度も呟いた。




「その話をたまたま遊びに来ていた、まりかが聞いてたんだけど、詳しく話すこともなければ、ましては性欲処理なんて酷いことは言ってないよ?どこからそんな話が出てきたんだか!」

 奈々子を抱き締めながら、バツが悪そうに話す智也に奈々子は、思わず笑ってしまった。

「智衣さん、泣いて喜んでくれたんだ。」

「娘のように思ってるからさ。」

「うん、ありがたいよ!…智也くん。」

「んっ?」

「私は、やっぱり求められないと不安になっちゃう。愛を確かめるのには、やっぱり素敵な行為だよね?」

 智也の腕から抜け出し、体を起こしながら、瞳は智也をとらえる。

「まだ、会議まで時間あるし…。…ねっ?」

 微笑んだ奈々子は、智也を見下ろすように、体の角度を変えて、自分から唇を重ね、その唇を徐々に下の方に這わせていった。智也は、嬉しそうにしながら瞳を閉じた。




 二人は、手をつないでホテルまでの帰り道を歩いた。4時からの会議に間に合うように家を出て、奈々子は道中ニコニコして顔が緩みっぱなしだ。

「瑞希さんにお礼言わなくちゃ。旅行行きたくないとか言っちゃったし。」

「俺からも改めてお礼言うよ。まりかにはちゃんと話をしるから。」

 二人は、お互いの手を強く握りしめて見つめあった。

< 117 / 143 >

この作品をシェア

pagetop