未来絵図 ー二人で歩むこれからー
台風は次々やってくる
夏が終わり、涼しい秋の空に変わった頃、ひとつ目の嵐はやって来た。
「すみません、高本奈々子さんは、いらっしゃいますか?」
昼食時間になり智也が来たためちょうど奈々子と、智也はご飯を食べていたところだった。
「奈々子さん。男性のお客様だけど。」
休憩室に、しおりが顔を出して、そんなことを言うからふたりとも"えっ"と、慌てて休憩室を出る。
ふと、入り口をみると見知った人物がいた。その人物は奈々子をみると、近くまで寄って来て、奈々子の肩を揺さぶる。
「高本のとこに、あすか来てないか!?」
「えっあすか?なんで!?」
「篤史とはあってる?」
「はぁ~!あのふざけたプロポーズ以来顔も見てないけど。」
だよなぁ。と落胆し肩を落とすこの男は、あのふざけたプロポーズをされた結婚式の主催者のだんなの方だ。湯之前 雅だ。
「何があったの?」
「俺たちは契約恋愛みたいな関係だったんだ。元々は。」
深刻に話す雅に、奈々子は近くのお客様打ち合わせスペースに座らせ、智也に先にご飯を食べるようにジェスチャーし、自分も雅の前に座った。智也は、気になりつつご飯を食べ出した。でも、耳はしっかりとふたりの会話を捕らえる。
雅の話は、驚くような内容であった。
高校時代。
あすかは篤史を好きで、雅は奈々子を好きだった。でも、二人ともそんな気持ちに気がつくこともない。篤史はあすかをただのクラスメイトとしか思っておらず、奈々子は、バイトばかりで仲の良い友達としか話さない。
そこで、何を思ったがあすかが篤史を妬かせるため、雅と恋人の振りをし篤史の気持ちを振り向かせようとしたのだ。
結局はそのことで、篤史はあすかの友達の奈々子を好きになり付き合い始めたのだが…。それは、あすかの誤算のひとつだった。
程無くして、奈々子の両親がなくなったことでさらに二人の距離は近づき、誰もが羨む二人になってしまった。これが、二つ目の誤算。