未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
 社長から賞状を受け取ろうと両手を出すと社長がチラリと左手の薬指を見たのに奈々子は気がついた。

 引っ込めるのもおかしいと思い、賞状を受けとると、社長が思い付いたように、弾けた声で話し出した。

「高木さん、副賞を今回は何にしようかと考えていたんだが、良いことを思い付いたよ。ゲストハウスウェディングの第一号を予約しておくよ。」

 マイク越しの社長の発言に、ホテルのみんなはわぁっ感嘆の声をあげる。
 
 特に、智也は奈々子のことを溺愛しいたのをみんな知っていたため、"松本さんついに!!""きゃーおめでとう"と次々にお祝いの言葉に包まれ、盛り上げようと、司会者が智也を壇上にあげ、奈々子の横に立たせたのだ。

 会場は、芸能人の結婚記者会見のように、質問が飛び交い、キスコールが鳴りやまない。

「キス!!無理無理!!」

 そう言う奈々子に対し、智也はニヤりと笑い、奈々子の肩を抱き寄せて、キスをしたのだ。

 辺りは黄色い声に包まれ、みんな興奮しているが隼だけは、直視できずそっと会場を出た。

「諦めるんでしょ?」

「……宮崎。」

 追いかけてきたしおりが、隼を引き留めた。

「んっ、指輪を見たときから完全に諦めてるよ。……でも、直視はまだ、出来ない。」

「そうだよね。」
 
 二人はまだ賑やかな会場の声を聞きながら、ホテルのロビーの椅子に腰掛け外を見ると、チラチラと白い雪が降っていた。

 その光景を、ただじっと見つめた。



「今日は色々あった謝恩会だったすね!」

「本当、瑞希ちゃんが脱走して支配人が連れ戻したのもびっくりしたけど、松っつんと奈々子ちゃんの記者会見も面白かったな!」

 謝恩会が終わり年明けに、ほのぼので新年会をすることになりみんなとは別々に帰宅することになった。

 新司とやよいは、雪がちらつく中、駅までの道を歩いている。

「松本さん、溺愛しすぎっすよ。でも、本当、すげーっす!見習わないと。」

「まっきーは、そのままでいいからね。」

 やよいが新司にニコリと笑うと、新司はやよいに向き直り"アパート来ませんか?"と消えるような声で誘った。

「うん、いいよ!」

 二人は手を取り合い新司のアパートまで、歩き続ける。

 ぎこちない二人の恋もまだ始まったばかりだ。

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