未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
「俺、今年で21なんすけど、経験ないんですよ。」

 智也はなんて言っていいか分からず、"いや、別に…いいんじゃない?"と曖昧にする。"モテそうなのにね。"と言うしおりの言葉に、瑞希とやよいも頷いた。

「酔ってないと、こんな話出来ないっすけど。高校受験の時のカテキョに、イタズラされて…。狭い部屋とか、二人っきりとか、気分悪くなって、吐いちゃうんっすよ。」

「いつもそれで別れて。それでも、一人理解してくるる人がいたんっすけど。手を中々出してくれないって、俺の友達と浮気したんっす。おれ、ずっとこのままなの嫌なんっすよ!奈々子さんなら気持ちわかってくれるっすか?」


 一気に話して酸欠状態になり、はぁはぁと呼吸を整える。奈々子は、そっと新司の頭をなでる。その行動に智也は驚いた。あの事件以来、自ら男性に触れる奈々子を初めて見たからだ。"奈々子さ~ん。"と、撫でられた新司は、子犬みたいに、瞳をうるうるしてる。

「ずっと辛かったね。……私は、もう大丈夫。今までは、恋愛ごとから逃げてたんだけど。そろそろ進みたいと思えるようになったの。」

 新司を撫でながら奈々子は言葉をつなげる。

「まっきーも、きっと大丈夫!……ってことで、この衣装で、まずは女子力アップ!!」

 奈々子は衣装を手にガッツポーズをしたと思うと、フラフラと智也の方に倒れてきた"ふたりとも、酔いすぎだろ"と、智也はため息をついた。

 その後、0時前に解散した。
 
 隼が酔って、"もう1件~。!"という新司を、"明日、早朝から市場だろ~が。"と、引きづりながらタクシーを捕まえる。

 やよいと、瑞希・しおりは、"今なら終電に間に合う!"
"松っん、奈々子ちゃよろしくね~。""送り狼はだめだよ~。松っん!"と駅の方に去っていく。

 「奈々子。帰るか。」

 智也は、返事をしない奈々子をおんぶしながら、会社とほのぼのに程近い、奈々子のアパートに歩きだした。
< 38 / 143 >

この作品をシェア

pagetop