未来絵図 ー二人で歩むこれからー 

 奈々子は、ふわふわほどよい浮遊感と爽やかなどこかで、嗅いだことある香りにゆっくりと覚醒する。

 目の前にある、大きな背中に一瞬びっくりしたが、すぐに、自分がおんぶされていることがわかり、慌てた。

「!えっ!?あっ!おろして!」

 慌てる奈々子の前から"もう、ついたよ?"と、優しい声がし、ゆっくりとおろしてくれる。

「や、やだ!私、ちょー酔っぱらい!松本さん、ごめんなさい!」

「ああ、ほのぼのから近いから、筋トレがわり。」

「もう、本当やだ。……今、何時ですか!?」

「あ~0時34分。」

 奈々子は、時間を聞いてびっくりする。まだ、0時前だと思っていたからだ。

 智也の家の最寄り駅の終電はもうとっくり過ぎている。しかも、明日は早番と、智也に聞いていた。色々な事情があるが、奈々子は思いきってみる。

「松本さん、終電ないでしょ?明日は早番だったよね。」

「ん?あ~。まあな。」

 ぎゅって奈々子は上着の裾をつかむ。

「泊まってく!?」

 驚いている智也と、様子を窺っている奈々子の視線が交わる。

「朝は、和食なんだけどいい?」

 奈々子が笑うと智也が"気が合うな。俺も。"と笑った。

 奈々子は、今日初めてあの日以来、智也を招き入れた。

 "もうそろそれ、進みたい。"そんな風に思っているのは嘘じゃない。

 智也に対して、あの日以来、積もった気持ちを伝えるには、まだ勇気は出ないが、たぶん、アクションを起こさないと、何も起きないんじゃらないか、そう感じる。

ー私は、もう、見守られだけじゃ、物足りないんだ。ー

 二人の後ろで、ドアが静かに閉まった。
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