未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
「誰にも触れて欲しくないし、誰にも渡したくない。」

「私、本当に今のままでいいなんて思ってないし、ちゃんと先に進みたい気持ちに嘘はないんです。」

 そっと、抱き締められた。次はビクッとすることもなく、警戒されることもなく、すんなり腕の中におさまった。

「奈々子…。付き合って。」

 耳元でそう囁かれ、奈々子はぞくぞくしてしまう。長年恋愛から遠ざかっているが、智也に欲情しているのが自分でもわかってしまう。

「私も好きです。付き合いたい。」

 うつむき加減で奈々子はハニカミながら、言葉にした。

「俺の家で二次会なんて、口実。」

「わたしも、そこまで子どもじゃないですよ。」

 抱き締められたままの奈々子が、智也を見上げる。そして、二人の視線が熱く交差し、智也の両手が、耳から頬を包み込まれたことで、奈々子は、さらに智也を上目使いすることになる。智也が屈みこみ、一瞬で唇を奪われる。はじめのうちは、呼吸も浅く、軽いチュッとしたものだった。しかし、奈々子がそれに答えようとすこし口を開けた瞬間に、勢いよく、舌が入ってきた。

「……んっ。…んっ、ん。」

 濃厚なキスに、呼吸も荒くなり、奈々子は、智也の胸のあたりを軽く押しやる。

「ん。…松本さん、」

 呼吸を整える奈々子。

「わるい。ちょっと理性が…。」

「びっびっくりしちゃって…。大丈夫です。」

 沈黙するが、すぐに智也が"今日泊まってく?"と話題をかえた。奈々子は、智也のシャツの裾を握り、キッチンの方へ行こうとする智也を引き留める。

「あの…。えっと。泊まって行きたい。」

「ん。いいよ。」

 それでも、シャツを握る手を話さない奈々子に、智也はちゃんと向き直る。

「ちょっとがっついた。」

「ん、そうじゃなくて。……びっくりしただけで、嫌なわけじゃ。…遠慮しないで…。」

 奈々子がすこし震えるのが分かる。そして、微かに耳が赤い。

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