未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
「そうなんっすか?都内っすか?海外っすか?」

「二人と同じホテルA'Zに勤務してるよ。就職してからずっと。」

 奈々子も新司も、世間は狭いなぁと話を聞いていた。ホテルA'Zも、従業員は多く、特に一般職と技術職なら、顔を知らない可能性もある。だから、出逢ってない可能性の方が高い。

「奈々子ちゃん、よく知ってる人だよ。」

 智衣に、うふふと言われて考える。就職してからも、何回かここを訪れたが、今までそんな話をしたことはなく、ましては、息子さんがらいる程度にしかしらなかった。

 私のよく知ってる人?私って技術職だからあんまり一般職の人知らないよね?

 ん?智衣さんの名字は、なんだったけ?いつも智衣さんとオーナーと読んでいるから忘れてしまっている。頭のなかの引き出しを何個も何個も開けていく。

 そして、ふと、ワイン工房ーMATSU ーの文字に目が止まった。
"なんでワイン工房ーMATSU ーなんですか?"
"だって、マツモトとかダサくて嫌じゃない?"
昔、奈々子は智衣から確かに名前の由来を聞いていた。

「奈々子さん?固まってますよ?」

「……もしかして、嫌、たぶんあってると思うんですけど。息子さんは、チーフコンシェルジュの松本智也さんですか…?」

「ピンポーン!」

 智衣は、奈々子の手を握り意味深な笑顔を向けてくる。新司はびっくりして、"えー!!"と絶叫。奈々子は、固まり続けていた。

「社長も教えてくれたら良かったのに。」

「私がドッキリさせるから言わないでって頼んだの。」

「じゃ、ドッキリ大成功っすね!」 

「うん!…奈々子ちゃん、智也と付き合ってるんでしょ。うふふっ。もう、嬉しくて、嬉しくて。まさか、今回来てくれるなんて思ってないし、智也にも奈々子ちゃんと知り合いっていってないし。智也も驚くよね!」

「お、驚きました。」

「さんざん、のろけを聞かされたんだからね?」

「えっ?」

「それ聞きたいっす!」
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